選書の
ご相談は
こちら
ちえの木の実

ちえの木の実の本棚

たくさんの物語に手をのばせる本の森のなかから、これぞ!という本を選りすぐった「ちえの木の実の本棚」を覗いてみてください。

2ひきのかえる

著者
にいみ なんきち/作 しまだ・しほ/絵
出版年
2019年
出版社
理論社
定価
1,518円(税込)

みどりいろのかえると、きいろのかえるが、畑の真ん中でばったり。
いきなり、お互いのからだの色に文句をつけます。
あっという間に、とっくみあいのけんかになりました。
ところがふと冷たい風を感じる2ひきは、冬眠が間近だということを思い出します。

 「はるになったら、このけんかのしょうぶをつける。」

さて、あたたかい春の訪れと共に、2ひきのけんかも再開するのでしょうか。
いえいえ、なんと長い眠りから覚めた2ひきは、お互いのからだの色に驚くのです。
冬の間からだについた泥土を、ラムネのように清々しい池の水で洗い流した、そのあとに。

 「もう けんかは よそう。」

『ごんぎつね』や『おじいさんのランプ』などで知られる、夭逝の童話作家、新美南吉の短い童話です。
日本に戦争の影が射していた時代に、22歳の若さで綴ったことばが、今もなお心の奥底にずしっと響きます。
小さな火種が、けんかによって大きな炎となり、真っ暗なダメージの色となる様子。
かえるの移ろう感情を表す、ひとはけの力強さ、潔さが伝わる、しまだ・しほさんの絵筆が、この物語をひきたたせています。
私たち人間も、まずはよく眠らなければ。
この2ひきのように。
それが平和への一歩につながるのであれば。

入はこちら