ちえの木の実の本棚

たくさんの物語に手をのばせる本の森のなかから、これぞ!という本を選りすぐった「ちえの木の実の本棚」を覗いてみてください。

星どろぼう

著者
アンドレア・ディノト/文 アーノルド・ローベル/絵 やぎたよしこ/訳
出版年
1978年
出版社
ほるぷ出版
定価

1650円(税込)

夜空に煌めく星、ぽっかりと浮かぶ月、一度でもとってみたい……と思ったことはありませんか?
ここにもいました。山のてっぺんの村にすむ、どろぼうです。
空の星まで届く長いはしごにのぼって、すばやく星を1つポケットに。袋に。樽の中に。
空から星が消えるまで、「星どろぼう」を続けたのです。

星が1つもなくなった空。村人は、びっくり、そしてがっかり、しょんぼり。
でも「月だけは守らないといけない」と知恵をしぼり、勇気を出して……見事「月どろぼう」をつかまえました!
つかまえた、はいいけれど、きらきらとどろぼうの家じゅうにあふれかえった星が、どうしたって戻せない。
星をとるのは簡単だったのに、ね。
星をもう一度空にくっつけるのは、どうしたらいい?
のりもタールもパンやのねりこも、だめ。空におしつけても、つーっと落ちてきてしまいます。

じゃあ空を見上げて、私たちはなにをする? 両手を合わせて、目をつむり、心の中で……。
そう、それが答えです。

この絵本を読んで、もう一度空を見上げると、ひゅーっと音をたてて空にのぼり、ピタッとくっつく星の音が聞こえてくるような気がします。
まるでこの地球上の誰もが、1つの星をかかえて生まれてくる、そんな気がしてならなくなるのです。
人里離れたところでひとりぼっちだった星どろぼうがほしかったのは、だれかの心だったのかしら。
手で触れてみたかったのは、心のぬくもりだったのかしら。
きりきりと切なくて、きらきらと眩しくて、ほかほかとあたたかい、そんな気持ちが手にとれるお話です。