ちえの木の実の本棚

たくさんの物語に手をのばせる本の森のなかから、これぞ!という本を選りすぐった「ちえの木の実の本棚」を覗いてみてください。

ロバのおうじ

著者
グリム童話 M.ジーン・クレイグ/再話 バーバラ・クーニー/絵 もきかずこ/訳
出版年
1979年年
出版社
ほるぷ出版
定価

1,980円(税込)

むかしむかし、広くて平和な国を治める王さまとお妃さまがいました。
すべてが幸せでしたが、ただひとつ、切実な悩みがありました。
子どもがいなかったことです。
そこで、なんでも願いを叶えてくれる魔法使いと、金貨とひきかえに子どもが授かるように約束しました。
ところが、王さまが大金が惜しくて金貨をごまかしたために、ロバの姿をした王子が生まれたのです。

王子はロバの姿をしていても、人間の子どもと同じような洋服を着て、王子としての嗜みや教えを身につけていきました。でも、いくら礼儀正しく振るまっても、どれだけ勉強をしてよい成績をとったとしても、最後には「ロバにしてはね……」と言われます。
人間の姿をしていないがために、相手にしてもらえず、いつも1人ぼっち。
そんな中、お城へやってきたリュート弾きから、リュートのあらゆる奏で方を教わり、どんどん身につけていきます。もはや、教えることはありません、と言われるくらいまでに。
リュートが相棒のような存在になった王子は、音楽が傍にあることで、どれだけ救われたことでしょう。

しかし、両親に美しい音楽を奏でても、ロバの姿をしていることで、ちゃんと見てもらえない。

 「どこかに いってしまおう。ロバっこのおうじさまなんかでいなくても すむ どこか とおいところへ……」

と、今まで着ていた洋服も脱ぎすて、大好きなリュートだけを持って、生まれた国をあとにしました。
旅のすえに辿りついた立派なお城で、王子は歓迎を受けます。
歌を歌い、リュートを奏でると、王さまも小鳥やお花も、誰もがうっとり。
なによりも、想い人から喜ばれる嬉しさ!
そんな満たされた日々もつかの間。お姫さまの元に結婚を申込む王子がいると知り、お城を去ろうと決めます。
そして、さよならの音色をリュートにのせて伝えると、魔法がとける出来事が……。

小さなころから肩身狭く育ってきた王子が、のびのびと今を楽しむ姿に、自分の居場所が見つかって本当によかった、と我が子を見守るような心持ちになります。なんといっても、見た目だけで判断するのではなく、心の美しさや心根を汲みとることの大切さに気づかされます。
これをきっかけに、人として、何を心の軸におくと、より彩り豊かな日々を送れるのだろう、と考えるのもいいものですね。