ちえの木の実の本棚

たくさんの物語に手をのばせる本の森のなかから、これぞ!という本を選りすぐった「ちえの木の実の本棚」を覗いてみてください。

ダチョウのくびはなぜながい?

著者
ヴァーナ・アーダマ/文 マーシャ・ブラウン/絵 まつおかきょうこ/訳
出版年
1996年
出版社
冨山房
定価

2200円(税込)

ずーっとずーっと昔のおはなしです。
その当時ダチョウは、今のように足は長いけれど、短いくびをしていました。
それはそれは、不自由なもの。想像してみてください。
地面に顔を近づけようにも、足を曲げたり思いっきり広げないと、獲物や水にありつけない。高い木の実を食べたくても、届きません。もどかしいですね。
そんなダチョウが、川で大きく足を広げて水を飲んでいると、ワニが声をかけてきました。
ひどく痛む虫歯を、ダチョウのくちばしで引っこぬいてほしい、と。
さあ、どうしよう。ワニは、あまり近づきたくない存在です。
でもワニは、切実なる叫びとともに「あたし、なにも わるいことは しないからさあ」、と。
ダチョウの心は、揺れます。
助けてあげようかな。
でも、やっぱり。
あぁ、ワニの泣き声が、あまりにかわいそうだから助けよう!
わるいことはしない、というワニの言葉を信じて、頭をワニの口の奥まで入れたそのときです!

 ワニは とつぜん、けさは まだ あさごはんを たべていなかった
 ことを おもいだしました。そこで、ガブッ!と、
 あごを とじ、ダチョウの あたまを くわえました。

歯の痛さよりも食い気が勝ったワニを信じてしまったダチョウ。川へ引きずり込もうとするワニに対して逆方向に、必死でふんばって引っぱります。うしろへ下がるほどに、くびがぐいぐい、ぐいぐい、と伸びていって……。

ダチョウの長いくびは、この奮戦から生まれたのですね。

食うか食われるか、どうなってしまうのだろう、と息をするのも忘れてしまう場面がこのおはなしの見どころ。
マーシャ・ブラウンは、どぎまぎする動物たちの表情を、伸びやかにはねるような線画で表現しています。ピーンと張りつめた空気のなか、軽やかなユーモアも感じ、まるで、読者も参戦しているかのよう。そして、おはなしのイメージに合わせて、画材や描法を変える作者の、この上ないものへの探究心や引き出しの多さに、感心します。

ページをめくるごとに、思わず、前のめりになるおはなしを覗いてみてくださいね。