ちえの木の実の本棚
たくさんの物語に手をのばせる本の森のなかから、これぞ!という本を選りすぐった「ちえの木の実の本棚」を覗いてみてください。
オレときいろ
- 著者
- ミロコマチコ
- 出版年
- 2014年
- 出版社
- WAVE出版
- 定価
-
1,650円(税込)
きいろは とつぜん やってきた
つかまえようとしたら にげた
猫の「オレ」は、必死になって「きいろ」を逃してなるものか、と追いかけます。
追いかけても追いかけても、追いつかない。
そうこうしているうちに「きいろ」が、声を出す間もないくらいの速さで、ぐんぐんと「オレ」の前を通りすぎてゆきます。
おいおい、どうしたことだ。何が起きているんだ。
また逃してなるものか、と、がむしゃらに追いかけます。
目の前の「きいろ」たるものをけっちらかしてやる、と一心になって。
相手は、なかなかに手強い。
勢いに飲みこまれそうになりながらも、一生懸命つかまえようとする「オレ」。
でも、つかまえられるものではなかったようだ……。
そして「きいろ」は、春を運んできました。
主人公の「オレ」は、動くものを追いかける習性から、目の前の瞬間にとびついてばかりです。勢いよく動く「きいろ」に目を奪われて、追いかけて、気づくと時が過ぎていました。「きいろ」という存在は、大きな時間の流れの中の季節がうつろいゆく、その瞬間を表しているよう。
「オレ」の青と、「きいろ」の黄、鮮やかな色の対比も、お互いを際立たせています。
思わずくすっと微笑んでしまう「オレ」の必死な表情や、ほとばしる生命の躍動に圧倒されていく「オレ」の様子を豪快に描く、画家のミロコマチコさん。ページをめくるごとに、すさまじい風や動物たちの吠える声、土のにおい、大地から溢れ出てきたような生命力が、私たちを絵本の中の、その瞬間へと誘ってくれます。
まさに、絵本ならではの醍醐味に、拍手を送らずにはいられません。
四季があるからこそ味わえる、あわいのひととき。
この時を逃してはいけないぞっ!と、鼻をくんくんさせながら、春のにおいをいち早く感じられる一冊です。
