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ちえの木の実

ちえの木の実の本棚

たくさんの物語に手をのばせる本の森のなかから、これぞ!という本を選りすぐった「ちえの木の実の本棚」を覗いてみてください。

ゆき

著者
ユリ・シュルヴィッツ/作 さくま ゆみこ/訳
出版年
1998年
出版社
あすなろ書房
定価
1,650円(税込)

街中がどんよりとはいいろの中、空からひとひらのゆきがまいおりてきました。

 「ゆきが ふってるよ」

いぬをつれたおとこのこがいいました。

男の子は、真っ白なふわふわとしたひとひらのゆきを見逃しませんでした。
大人はたいしたゆきにはならない、どうってことないさ、と知らん顔。
ゆきに喜ぶ子どもなんて全然相手にしません。

ところが……
あとからあとからゆきが降ってきて、ゆきはだんだんと街中を覆います。
そこに繰り広げられる世界は、ときめきと喜びに満ちたものでした。

ゆきを全身で楽しむ、男の子と犬の表情のなんと豊かなことでしょう!!
そして、高揚感が高まるにつれ、ページごとの絵が大きく、開放的になっていきます。
物語の最後には、どかーんと余白のない真っ青な空のもと、真っ白なゆきがかがやきを放っているではありませんか。
はいいろだった空がいつの間にか澄みわたり、それはまるで男の子の心のうちを描いているよう。
それとは対照的に、はいいろの空のような淡々とした大人の表情が、男の子の躍動していく気持ちを、くっきりと際立たせています。

ページをめくるたびに、まるで短編映画を観ているかのように刻々と変化する、ゆきの静かな描写。
そして、絵の枠をこえてわくわくがあふれて止まらない気持ちを、主人公の男の子といっしょに味わえる、心はずむ絵本です。

ぜひ、手にとって味わってみてください!

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