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ちえの木の実

ちえの木の実の本棚

たくさんの物語に手をのばせる本の森のなかから、これぞ!という本を選りすぐった「ちえの木の実の本棚」を覗いてみてください。

まゆとりゅう

著者
富安陽子/文 降矢なな/絵
出版年
2008年
出版社
福音館書店
定価
1,100円(税込)

せいたかのっぽのやまんばと、そのむすめのまゆが、毎回個性豊かなキャラクターと出会う「やまんばのむすめ まゆ」シリーズ。

まゆは、ちっちゃなからだにまっかな髪。
力持ちで、パワフル。
そして誰に対してもまっすぐで優しい女の子です。
絵本の中のまゆが大好きになり、いつも元気をもらえる、そういう存在です。
そしてやまんばは、頼れる肝っ玉母さん。
たくさんのおきゃくさまもお手製のごちそうでもてなします。
(やまんばの作るヤマモモのおさけや、保存食や、おにぎりの美味しそうなことといったら!)
まゆのことも、特にあれこれ口出しせずに、大きな包容力で遠くから見守っています。
一本芯がびしっと通っていて、かっこいい。
母親として、憧れてしまいます。

『まゆとりゅう』では、春いちばんの雨を降らせるりゅうをおきゃくさまに迎えます。

となりやまに、ゆきがとけてできたひとすじの線。
この“はるのりゅう”が出てくると、毎年かならずやってくるおきゃくさま。
ドンゴロンゴロンという大きな音といっしょにあらわれたのは、ほんもののりゅうでした!
今年は、生まれたばかりのりゅうの子どもも一緒です。
まゆが一生懸命りゅうの子のお世話をすると、りゅうの子がひょいと背中に乗せてくれました。
さあ、空のぼうけんの始まりです。

「あめが ふるよ! りゅうが はるいちばんの あめを ふらせるんだ」
古くから、りゅうは田畑に必要な雨を降らせてくれる存在として崇められていたそうです。
大迫力の画面とおはなしは、りゅうやまゆたちと一緒に、眠っている春を呼び起こしているような気持ちにさせてくれます。
なんだか自分の中の眠っていたエネルギーまで、ムズムズと動き出してきそう。

みじかいおはなしの中に、長い映画を見たかのような魅力がぎゅーっと詰まっています。
まゆの相棒ともいえるキツネくんや、裏表紙にもご注目!
絵本のなかに、ちいさな春が見つかるでしょう。

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