ちえの木の実の本棚
たくさんの物語に手をのばせる本の森のなかから、これぞ!という本を選りすぐった「ちえの木の実の本棚」を覗いてみてください。
はっぱみかん
- 著者
- 風木一人/文 山口マオ/絵
- 出版年
- 2007年
- 出版社
- 佼成出版社
- 定価
-
1650円(税込)
箱いっぱいにどっさり、みかんが届きましたよ。
あら? 1つだけ、頭に葉っぱがついたままです。いえ、葉っぱがしっかりついています。
「はっぱみかん」は、「ぼくがどれだかわかる?」と得意顔で話しかけてきます。
居場所は、積み上げられたみかんピラミッドのてっぺん。
下になるなんて冗談よしてよ、なんて、いばりんぼう。
ところが、このあと、たいへんな事件が勃発します!
にゅーっと伸びてきた手は、いともたやすく、「はっぱみかん」の大事な葉っぱをプチッ。
そこから一気に急降下する「ただみかん(旧はっぱみかん)」のつぶやきには、耳をふさぎたくなるほどです。
「さっきまではっぱのついてたみかん」
「きのうまではっぱのついてたみかん」
それが、葉っぱをなくした彼の新しい名前。
ところが、ところが、このあと、みかんの兄弟からのある一言にはっとします。
本日2度目の、青天の霹靂です。
葉っぱがあるとか、葉っぱがないとか、そんな外見にどんな意味があるんでしょうね。
葉っぱがあるから優位、葉っぱがないと普通……何にこだわっていたんでしょうね。
くるくる変わる彼の心情は、ユーモラスに映りますが、なかなかに読み手の深いところを突いてきます。
さあ、もう一度、表紙でにっこり笑っているみかんの顔を見て。
見返しの、みかん山でたわわに生るみかんたちを見て。
自然の恵みをたっぷり受けて育ったみかん、みかん、みかん。
みんなみんなおいしそうでしょう?
みんなみんな特別でしょう?
