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ちえの木の実

ちえの木の実の本棚

たくさんの物語に手をのばせる本の森のなかから、これぞ!という本を選りすぐった「ちえの木の実の本棚」を覗いてみてください。

くうき

著者
まど・みちお/詩 ささめやゆき/え
出版年
2011年
出版社
理論社
定価
2,090円(税込)

ぼくの 胸の なかに
 いま はいって きたのは
 いままで ママの 胸の なかに いた くうき

まどみちおさんの『くうき』という詩は、私たちが呼吸をするように、すうっと、やさしくすべりだすようにはじまります。
決して目で見ることはできない「くうき」の存在感を、これほど強く感じられる絵本は、いままでにあったでしょうか。

地球上のどこにでも、分け隔てなく存在し、いつもだれかの身体から身体へ、入れ替わってゆく「くうき」。
大きな存在にも関わらず、そのことを忘れられて、あたりまえのように、普通のことのように、それでも確かにある「くうき」。
あとがきで、空気を絵にすることの難しさを語る画家への答えの中で、まどみちおさんは空気を「くうき様」と呼んでいます。
見えるもの、見えないもの、あるもの、ないもの、生きるために必要なもの、生きるということ……目では見えない「問い」というものを絵本という形で投げかけてくれた2人の作者を、まど・みちお様、ささめやゆき様とお呼びしたくなる、そんな絵本です。

 5月
 ぼくの心が いま
 すきとおりそうに 清々しいのは ……

風薫る5月に、このくだりばかりを読んでしまいます。
地球上のあちらこちらで空気を吸いこむ子どもたちに、生い茂る青葉の空気が入るといい。
子どもたちの目に映るのは、青々とした葉の色であってほしい。
そして、身体に入り込む空気は、すきとおりそうに清々しいものであってほしい。
空気を「有形」にしてくれたこの絵本を読むと、そんな願いが叶うような気がしてしまいます。

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