ちえの木の実の本棚
たくさんの物語に手をのばせる本の森のなかから、これぞ!という本を選りすぐった「ちえの木の実の本棚」を覗いてみてください。
いちご
- 著者
- 新宮晋/作
- 出版年
- 1975年
- 出版社
- 文化出版局
- 定価
-
1870円(税込)
表紙からドーンとはみ出さんばかりの、まっかな、みずみずしいいちご。
パクリと一口で食べられる小さないちごは、大きな自然の産物なのです。
はじまりのページと、終わりのページは、灰赤一色に浮き上がる白い文字。
― 夕やみの中 すっかりいちごのなくなった畑から まだこんなに甘い香りが流れてくる。―
雪解け間近の土の中を表しているのか、はたまた、いちごの赤と甘い香りを引き立たせているのか。
このインパクトのあるはじまり方は、読み手の五感をふるわせます。
大地をつるが這い、葉がつややかに茂るなか、雪に覆われた大地の下で静かに眠るいちご。
光、風、雨の、自然の恵みをたっぷり浴びて、いちごは誕生します。
その一瞬一瞬を愛でるように、研ぎ澄まされたことばと絵で描かれるいちごの生命は、これまでの「かわいいいちご絵本」のイメージをガラリと変えてしまうほど。
それはまさに、宇宙の中の1つの惑星、なのです。
(いちごには北極と南極があるそう!)
「いちご礼賛」ともいえるこの絵本の作者は、風や水といった自然エネルギーで動く彫刻を作る、新宮晋さん。
水の惑星である地球の住人だから、風や水によって作品の動くさまに、地球が生み出すエネルギーを感じるのですね。
そんな新宮さんが、初めて手掛けた絵本が、この『いちご』。
いちごが、大好きなのだそうです! このスケールと迫力で、それがひしひしと伝わってきます。
「いちごには はてしない風景がある」と語るほど、恵み豊かないちごの大きな一粒を、じっくり味わってみませんか。
