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10月のおすすめ本②が本棚に仲間入りしました
*10月のおすすめ本②*
こんにちは。
長い夏のあと、足早にやってきた寒さに体が追いつかないころ。
日々、ちかくの樹々を眺めていると、静かに冬へと準備をしている様子がうかがえ、もう秋も深まっているんだなぁと感じます。そんな秋の夜長のお供に、ぜひ味わってもらいたい絵本『ある星の汽車』をご紹介します。
ひろい ひろい だいちを きしゃが はしっています。
ゴトゴト シュッシュッ
ゴトゴト シュッシュッ
つきが あかるく てらすなか、きしゃは はしりつづけます。
モーリシャスドードーの紳士や、オオウミガラスの夫婦、リョコウバトの団体さん。もう、お気づきの方もいらっしゃるかもしれません。汽車には、絶滅した、もしくは絶滅しそうな動物たちが、乗り合わせています。その中には、人間の親子も。
その男の子が、わいわいがやがやと車内で繰り広げられるおしゃべりに耳を傾けながら、おさんぽをしています。
「ウォーン」だれかの吠える声がするぞ、と行ってみると、おおかみのおくさんたち。あまりにもみごとな月だから、遠吠えしたくなっちゃったそう。深いため息をつく者、物思いに耽り、遠くをじっと見やる者、それぞれの時間を過ごす姿から、心の嘆きが聞こえてくるようです。
車掌さんが、モーリシャスドードーに声をかけ、まもなく汽車が止まりました。「1681」という駅で。オオウミガラスは「1844」。リョコウバトは「1914」。次々と下車していきます。
一人、またひとりと去ってゆき、ガタゴトという音だけが聞こえてくるなか、汽車は止まります。今度は、なんともかわいらしい鳥の子どもが乗りこんできました。希望の星のように眩しくて、みんな大喜びで迎えます。そして、汽車はとおいとおい未来へと走りつづけます。
汽車を降りていった動物たちの、澄んだガラス玉のように尊く静かな眼差しに、ハッとさせられます。何ともいえない、やるせなさや切なさが、ひしひしと絵から伝わってきて、心がギュッとします。
「明けない夜は、ないはずなのに……」というつぶやきが、どこからともなく聞こえてくるよう。
言葉では言いつくせない動物たちの表情が、森洋子さんの細やかな描写の鉛筆画で、あざやかに目の前に立ち現れ、心をつかまれるのです。
私たち人間は、地球号という汽車に乗る仲間として、動物たちとどんな未来へ向かい、共に生きていけばよいのか、と模索するきっかけになった一冊です。
これを機に、自然と人間、動物と人間の関わりについて、思索してみませんか?
『ある星の汽車』から始まる
「共に生きる」を模索しつづけること。
失ったものは二度と戻ってこないという事実に気づき、受け入れ、「足るを知る」こと。
こちらをテーマに店内2Fでフェアを開催しています。お越しの際は、ぜひ覗いてみてください!
(スタッフ荒木)
書籍名:『ある星の汽車』
出版社:福音館書店
著者:森洋子
出版年:2025年
定価:1,980円(税込)
