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ちえの木の実

ちえの木の実の本棚

たくさんの物語に手をのばせる本の森のなかから、これぞ!という本を選りすぐった「ちえの木の実の本棚」を覗いてみてください。

おじいちゃんのたびじたく

著者
ソ・ヨン/文・絵 斎藤真理子/訳
出版年
2021年
出版社
小峰書店
定価
1540円(税込)

ある日、おじいちゃんのうちのドアが、トントン。
ちょこんと顔をのぞかせたのは、白くてまるいふわふわの“おきゃくさま”。
おじいちゃんが待ち焦がれていた“たびのおとも”です。

さあ、おじいちゃん、あの世へ旅立つための準備スタート!
おじいちゃんったら、まるで、遠足の前の日のようなはしゃぎようです。
タンスの下から小銭をかき集めて(あの世でも使うんですって)、ゆでたまごを作って(旅の途中でおきゃくさまと食べるんですって。塩も忘れずに)、お気に入りの服えらび(着ていく服はおばあさんが好きな服!)。
おきゃくさまからうれしいお知らせもありますよ。
「むこうについたら おくさんが むかえに来てくれますよ」
ああ、うれしい。ああ、まちどおしい。ひげそり、あかすり、パックにも余念がありません。

このおじいちゃんが暮らしていたのは、韓国のとある街。
日本のどこかの風景のような桜が咲きほこり、公園にはすずめやチョウがあそび、おじいちゃんの歩む背中に、明るく手を振っているかのよう。

最愛のおばあちゃんがいるから? 人生を幸せに全うしたから? それとも、手をつないであの世へと歩く友がいるから? おじいちゃんはもう、杖をついて前しか見ていません。足取りも軽やかです。
こんな風におめかしして、この世に幕を閉じられたらいいですね。
「さよなら」ではなく、大好きな人に会いに行く姿に「いってらっしゃい」と声をかけて送り出したいですね。

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