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書籍名 いわずにおれない
出版社 集英社
著者 まど・みちお/著
出版年 2005年
定価 700円+税

あ ら す じ

 齢97を数える、ひとりの男性。細いお顔に、時々眼鏡をかけたりして、パリッと糊のきいたシャツを着る。きっとどこかですれ違っても、彼の人だとは気付かない。
 でも、その人が皺の刻まれた手を額にあて、空を仰いで佇んでいたら、何もないように見える道端で、しゃがみこんでじっとしていたら。ふと気になって、誰もが振り返ってしまうかもしれない。

 「ぞうさん」「一ねんせいになったら」「やぎさん ゆうびん」幼い頃、誰もが聴いたことのある、そして母親と共に口ずさんだであろう、遠い日の馴染み深い歌詞が、ふっと記憶によみがえる。

 含羞の人と言われる詩人は、語り口も朴訥として、そして何より謙虚であるという。きっと、その瞳にはとても純粋な光を宿して、そして心には、はかりしれないほどの奥深さを秘めていらっしゃるのだろう。
 「一生懸命になれば、いのちの個性が際立つ」「すべての存在は、そこにあるだけで尊い」と、不変の輝きを放ちつづける真理と出会わせてくれる一冊。シンプルな言葉に込められた、感謝と祈りを受けとるとき、まど・みちおというその人の、手の温みを思わずにはいられない。



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