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ちえの木の実

ちえの木の実の本棚

たくさんの物語に手をのばせる本の森のなかから、これぞ!という本を選りすぐった「ちえの木の実の本棚」を覗いてみてください。

きみがしらないひみつの三人

著者
ヘルメ・ハイネ/作・絵 天沼春樹/訳
出版年
2004年
出版社
徳間書店
定価
1,430円(税込)

小さな頃、からだの中でたくさんの小人がトンカンと働く姿を絵本で読んだことがあります。
そうか!小人たちが見えないところで働いてくれているから、私は生きているんだ。
がんばれがんばれ、とおなかを撫でながら話しかけていたものです。
その小人たちを長い間忘れていましたが、もういちど思い出させてくれたのが、『きみがしらないひみつの三人』でした。

 きみが うまれた日、三人のともだちは やってきた。
 アタマはかせは 赤ちゃんぼうしのしたのやねうらべやに じんどった。
 ハートおばさんは きみの ひだりむねのへやにすみつき、
 ふとっちょのいぶくろおじさんは 台所で はたらきだした。

アタマはかせは、感じたこと、考えたことをカードに残し、いつでも思い出せるように、きれいに整理整頓してくれる。
ハートおばさんは、いろんなきもちのお世話役。
心が風邪をひいたとき、真っ先に治してくれるし、「きみ」のきもちもだいじにしまっておいてくれる。
いつか使う日のために。
いぶくろおじさんは、食べものの管理人さん。
食べたもので体が悲鳴をあげないように、冷たいものは温めたり、熱いものは冷ましたり。
三人は、協力しながら、こんこんと泉のようにわいてくる「生きる」というエネルギー源となって「きみ」を助けてくれます。
ずっとずーっと、どんなときでも「きみ」に寄り添い、大樹のように懐ふかく、どんなことからも守ってくれる頼もしい存在。
こんなにも、心づよいことがありましょうか!
そして「きみ」がこの世からさよならしたあとも、「きみ」を支える仕事は続きます……。

体や心が不機嫌になるときは、頭と心と体にいる三人のうちの誰かがバランスを崩してしまったサインなのかもしれません。
あれ?けんかしちゃったのかな。
けんかの原因は、三人を頼りすぎていたからかもしれない。
なかよくしてもらえるように、私自身すこやかであることを心がけたくなります。
そうすることで、私という存在が何にもかえがたく愛しいと感じるものだなぁと、改めて気づかされます。
どうにもこうにも立ちゆかなくなったときに、三人がせっせと働いてくれていることを想う。
それだけで、よし、前を向いていこう!と、しょんぼりした心がふわりと風にのって動きはじめるのです。

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