詩集『朝、空が見えます』は、歌人、東直子さんが2017年元旦から大晦日までの、365日分の早朝の空の「ことば」をまとめたものです。
ぼんやりしていてもゆるしてくれそうな、もうしわけなさそうな、空色です。
(3月30日)
あんなに語りあったのに忘れてしまった言葉たちがつまっているような白い空です。
(6月8日)
上り坂を歩きながら話すいくつかの言葉のように、ぽつぽつ雨が降っています。
(9月12日)
たわいのない会話のなかからポロリと出てきたような空の様子がつづられています。
そうそう、こういう空の色見たことある!もしかして、同じ空を見ているのかしら。
ページをめくるたび、心くすぐられるような言葉の数々に、ぐいぐいと引きこまれます。
そして、この詩集のおもしろいところは、本をひらくたびに、言葉がコンコンとノックしてくること。
この間まで見えていなかった言葉が、ふいに目の前に飛びこんできて、いつも新鮮な心持ちで「空」を味わえるのです。
東さんの言葉を編む力があるからこそ、その空にちょっと背のびをしたら手が届きそうな、近しい感覚を持てる一冊。
日々見上げる空とともに、本の中で見上げる空に浮かぶ雲を想うのも、この上ないひとときです。
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