『魔法のことば』=”MAGIC WORDS”は古より人々に伝わる口承詩です。
文字を持たないイヌイット(エスキモー)が口伝えで語り継いだ神話や物語を、今に生きる私たちはそれぞれの国の、それぞれの言語で味わうことができます。
人間、だとか、動物、だとか、そのような区別はなく、お互いがお互いになれた、という時代。
はっきりとした境界線はなく、みな同じことばを話していた、というのです。
そして、そのことばは、不思議な力をもつ「魔法のことば」だった、というのです。
ことばは きゅうに生命(いのち)をもちだし
人が のぞんだことが
ほんとにおこった――
したいことを、
ただ 口にだしていえばよかった。
想像を絶するほどの厳しい極北の地から、何千年という時を経て、絵本という形で伝わったことば。
何度読んでもただただ素朴で、ごくりと一瞬で飲みこめるほどすっきりしています。
大切な教えだからこそ、声にして、ときには歌にして、繰り返しことばに乗せていたのかもしれません。
そんな歴史あることばの連なりに絵を添えたのは、型染の第一人者として知られる、柚木紗弥郎さん。
「さみろうおじいちゃん」と親しみを込めて呼びたくなるほど、あかちゃん絵本から物語の絵本までを、この世に生み出しました。
驚くのは、この絵本が御年72歳のときの、絵本デビュー作だったということ。
このことばには、この絵しかない!と、色彩とデザインとことばの掛け算の妙が感じられます。
読むたびに体の芯があたたまり、しっかりと地に足をつけて歩み出したくなるような、そんな力をくれる1冊なのです。
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