みどりいろのかえると、きいろのかえるが、畑の真ん中でばったり。
いきなり、お互いのからだの色に文句をつけます。
あっという間に、とっくみあいのけんかになりました。
ところがふと冷たい風を感じる2ひきは、冬眠が間近だということを思い出します。
「はるになったら、このけんかのしょうぶをつける。」
さて、あたたかい春の訪れと共に、2ひきのけんかも再開するのでしょうか。
いえいえ、なんと長い眠りから覚めた2ひきは、お互いのからだの色に驚くのです。
冬の間からだについた泥土を、ラムネのように清々しい池の水で洗い流した、そのあとに。
「もう けんかは よそう。」
『ごんぎつね』や『おじいさんのランプ』などで知られる、夭逝の童話作家、新美南吉の短い童話です。
日本に戦争の影が射していた時代に、22歳の若さで綴ったことばが、今もなお心の奥底にずしっと響きます。
小さな火種が、けんかによって大きな炎となり、真っ暗なダメージの色となる様子。
かえるの移ろう感情を表す、ひとはけの力強さ、潔さが伝わる、しまだ・しほさんの絵筆が、この物語をひきたたせています。
私たち人間も、まずはよく眠らなければ。 この2ひきのように。
それが平和への一歩につながるのであれば。
|