水車の池の底にある小さな家に、小さな水の精が誕生しました!
緑色の髪の毛に、緑色の目。
10本の指と水かき。
それだけで「うちに、ほんものの水の精が生まれたよ!」とおおはしゃぎのお父さんです。
ちょっぴり心配性なお母さん。
ちょっぴり早い子どもの成長に期待と愛情たっぷりのお父さん。
そして、水の中に棲む生き物たちに囲まれて、彼は好奇心旺盛にすくすくと育ってゆくのでした。
魚の名前を覚えるのも、泳げるようになるのも、あっという間。
なかなかのハイスピードで成長する水の精の姿は、母目線では「ドッキドキ」、父目線では「よおしよし」といった感じ。
子どもたちはきっと「次、なにしちゃうの〜?」と前のめりになってしまうはず。
興味をもったらまっしぐら。
中でも、水車ですべりっこは、人間の子は絶対にまねしてはいけませんが、骨や体のつくりが丈夫な水の精は、水車の輪にガタンガタン乗るのもお手のもの!
もちろん、度を越えた行動には、お父さんにおしりぺんぺんされてしまいますが……。
見るもの、聞くもの、感じるもの、すべてがはじめて。
すべてが新鮮。
足がカラカラに乾くと病気になってしまうことも、雨が友だちだと分かった瞬間も、すべてが発見。
そして学び。
小さい水の精が、目をクリクリ、パチパチさせながら、彼の世界の扉を開けてゆきます。
コイのチプリヌスや、人間の子どもたちとの交流を通して、その世界はもっともっと広がります。
そして、彼の目の輝き、なにげなくこぼれる瑞々しい言葉に、読者の心もいっしょに潤ってゆくのです。
『クラバート』や『大どろぼうホッツェンプロッツ』でおなじみ、ドイツの児童文学作家、プロイスラーがはじめて書いた物語。
自分の娘たちに枕元で語ったお話が、こうして海を渡って、子どもから大人まで楽しめるようになりました。
日本だったら、この緑色の精って……河童かな、人魚かな、なんて想像しながら、いたずらっ子の水の精の目で見る広い世界を味わうのもよいでしょうね。
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