「喋喋喃喃(ちょうちょうなんなん)」という言葉があります。
まじないの言葉のような、詩のような四字熟語には、こんな意味があるようです。
「ひそひそと小声で親しそうに話し合う様子」
『ちょうちょうなんなん』は、1羽のちょうちょう(蝶蝶)の羽ばたきから、絵巻物のように物語が繋がってゆくさまが描かれています。
ちょうちょうが羽ばたき、その羽ばたきが、くまの深いねむりをさまし、そして、めざめたくまは、水あびをし、水しぶきに驚いたかえるは、川に飛び込み……。
自然界の住人たちは、リレーをしながら繋がりあっているようです。
そんな1場面1場面を見届けながら、軽やかに飛んでゆくちょうちょうの軌跡が、くっきりとしたピンク色の線で描かれています。
まるで「バタフライエフェクト」を見ているかのよう。
ちょうちょうの羽ばたきのような、ほんの些細なできごとが、予測不能な結果を引き起こす……その過程には、くま、かえる、少年、こうま、こうもりがいて、地球の裏側にまで連鎖は続くのでしょう。
絵本の中のちょうちょうは、実に衝撃的なラストを迎えます。
衝撃的、というのは、単に人間目線な感じ方であって、ちょうちょう本人の感じ方とは違うのかもしれません。
なぜなら
「このおはなしは ちょうちょうの みちたりた いちにちと いっしょうの おはなし」
と締めくくられるのですから。
音もたてずにひらひらと飛ぶちょうちょうは、あちらこちらで、地球上の音を聴いているのかもしれません。
ちょうちょうの羽ばたく音に耳を傾けてみたら、その行為が新たなバタフライエフェクトを生み出し、いつか地球の裏側で大きな風を作り出すのかもしれません。
1冊の絵本が、そんなふうに想像の羽を広げてくれました。
親子で、または親しい友だちと、喋喋喃喃とする姿は、春の風に舞うちょうちょうの姿に重なるでしょう。
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