あかいボタンの目をつけた、まっしろいぬいぐるみのうさぎ、ぴょん。
きょうは、たいへんなことがおこりました!
ころ ころ ころ ころ
ころ ころ ころ ころ
かたほうの目のボタンが、草むらに落ちて、ころがっていってしまったのです。
あかいボタンは、すっかり「あかいボタンさん」になって、きいろいボタンのいつつごきょうだいに出会います。
さあ、そこからが冒険のはじまり。
汽車にのって、ゆうえんちへ。
針やまのスキー場で、おおはしゃぎ。
くろいボタンのおじさんにぶつかって、一目散ににげだすことに。
にげて、にげて、たどりついたのは、ボタンのくにのおしろでした。
あかいボタンを待っていたのは、ボタンのくにの王さまに届いた、ぴょんからの手紙。
「おねがい おねがい しますです」と、ボタンを見つけたい切実な胸の内が、たどたどしくもまっすぐ伝わります。
よかったね、ぴょん。
よかったね、ボタンさん。
物語のはじまりのページのボタンと、もとどおりの目になったボタンのおかお、見比べてみてください。
この場所がいちばんすきなんだ、ずっとぴょんの目でいたいんだ、そんな声が聞こえてきそうです。
「ラララン ロロロン〜」が聞こえたとたんポッと心がときめく『わたしのワンピース』の作者、にしまきかやこさんのデビュー作です。
ご自身は「若くて粗忽な作品」とおっしゃいますが、リトグラフによる瑞々しい色の重なりが、子ども時代の私の心をずっとなでていました。
ボタンのようにころころと転がってゆく物語のおもしろさはもちろんのこと、「たそがれどき」と命名したくなるような色味が、じんと心に染みるのです。
ボタンがとれて悲しかったこと、黒くて四角いボタンおじさんがほんとうに恐ろしかったこと、ぴょんの手紙の文字が気になってしかたなかったこと、それからそれから……。
たくさんの月日がたつのに色褪せることのない、いつまでも鮮やかな思い出の絵本です。 |