街中がどんよりとはいいろの中、空からひとひらのゆきがまいおりてきました。
「ゆきが ふってるよ」
いぬをつれたおとこのこがいいました。
男の子は、真っ白なふわふわとしたひとひらのゆきを見逃しませんでした。
大人はたいしたゆきにはならない、どうってことないさ、と知らん顔。
ゆきに喜ぶ子どもなんて全然相手にしません。
ところが......
あとからあとからゆきが降ってきて、ゆきはだんだんと街中を覆います。
そこに繰り広げられる世界は、ときめきと喜びに満ちたものでした。
ゆきを全身で楽しむ、男の子と犬の表情のなんと豊かなことでしょう!!
そして、高揚感が高まるにつれ、ページごとの絵が大きく、開放的になっていきます。
物語の最後には、どかーんと余白のない真っ青な空のもと、真っ白なゆきがかがやきを放っているではありませんか。
はいいろだった空がいつの間にか澄みわたり、それはまるで男の子の心のうちを描いているよう。
それとは対照的に、はいいろの空のような淡々とした大人の表情が、男の子の躍動していく気持ちを、くっきりと際立たせています。
ページをめくるたびに、まるで短編映画を観ているかのように刻々と変化する、ゆきの静かな描写。
そして、絵の枠をこえてわくわくがあふれて止まらない気持ちを、主人公の男の子といっしょに味わえる、心はずむ絵本です。
ぜひ、手にとって味わってみてください!
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