「いのちは神さまのおくりものだ。たいせつに生きるんだよ」
毎朝、船のりの男は、海辺にすむヘビにこう声をかけていました。
この船のり、かつては世界中を渡り歩いていたのですが、不幸が重なり、今は厳しい生活を送っています。
そんなとき、とつぜん(鶴の一声ならぬ)ヘビの一声が!
船大工に船を作ってもらい、2倍のお金を払い、さらに12人のたくましい船のりをやとい、2倍のお金を払い……。
ここまで投資してできあがった船に、船長として乗り込みます。
ヘビと、12人の船のりを乗せて出港しました。
ここからの船の旅すべてが、ヘビの予言通りに運ばれます。
大嵐の訪れも、巨大な鳥の出現も、島にいる年とったおばあさんの持つ3つの宝のことも。
勇気と信念をもって、船のりの誰かが、1つひとつミッションを果たすのです。
命がけで立ち向かう姿にハラハラ。
致命傷をも回復させるヘビの力に「よしっ」とハイタッチしたくなるほど、彼らの勇姿にぐいぐい引き込まれてしまいます。
これまでの不運を一気に払拭させる、再生の物語。
ヘビはいったい何者なのか?
なぜ、ヘビはすべてをお見通しだったのか。
なぜ、ヘビにかけられた呪いを解くために、船長に白羽の矢が立ったのか。
すべてが最後の、これでもかと喜びを全身で表す場面につながっています!
どん底にいても、試練の旅路でも、ヘビへのあいさつや気遣いを忘れなかった、心根のやさしい船長が導いた運命だったのかもしれません。
これは、フランスとスペインにまたがるバスク地方に伝わるお話だそうです。
7色という限られた色が物語を彩り、なかでも緑と赤が「バスクの色」として印象的です。
どこか花札を彷彿とさせる、ハイカラで落ち着いた色味ゆえに、喜びをあらわにするひょうきんな表情が引き立つのでしょう。
このような「めでたしめでたし」に、何度でも再会したくなる、愉快でほろりとする昔話です。
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