お月さまの子、という異名を持つ男の子、ミシェル・モラン。
寂しそうで、物憂げな表情をしていますが、月が空に光っていさえすれば、にこにこ幸せです。
目をつぶっていても、目の奥にちゃんと見える月は、ミシェルの大のなかよしでした。
地球の住人(大人たち)と、月の子どもミシェルの、どこか噛み合わないような会話が続きます。
噛み合わない……というのは、大人の「常識」や「色眼鏡」が邪魔をして、本質が見えづらくなっているからかもしれません。
大人たちは、ミシェルを“どこか変わった子”扱いします。
せっかく楽園のような、月の世界のことを教えてくれているのに。
ミシェルは、顔も知らないパパやママの話、ふたりが消えてしまったわけ、そして「つきのオペラ」のことなど、嬉しそうに語ってくれます。
そうして、少しずつ心がほぐされてゆくにつれ、お月さまの実体が見えてくる気がするのです。
お月さまの人は、地球に長くはいられなかった、とミシェルは言います。
さわがしかったからだ、と。
機械の音、しかも、何もかもを叩き壊す、戦争の機械の音がしたからだ、と。
地球に暮らす私たちは、いつか、お月さまの人を迎えられるでしょうか。
「このちきゅうが あたらしい ちきゅうになったら また あそびにくるからね」
そう言い残したお月さまの人に、顔向けできるような星を作ることができるでしょうか。
今から約50年ほど前にこの世に出た絵本ですが、相変わらず愚かな戦争を繰り返している地球です。
ミシェルの誇る、月のオペラの旋律が、響いてゆくことを願ってやみません。
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