ピップとフローラは、身よりのない子どもたちが暮らす<子どもの家>のはみだし者。
ある日2人は、全身紫色で着飾った、妖艶な女の人に連れ去られそうになります。
そして逃げているうちに森の奥深くへと迷い込み、別世界に足を踏み入れてしまうのです。
そこは、ボヨボヨやリスイタチ、いい香りのするシナモングマ、魔女や人喰い鬼、それからスナーグたちの生きる世界でした。
規則にうるさい<子どもの家>での生活にうんざりしていた2人は、未知の世界の冒険に心躍らせます。
でも、冒険には危険がつきもの。
悪い魔女が、長年温めていた計画を実行するためにフローラを連れ去ろうとします。
2人は魔女の手を逃れることができるのでしょうか。
アリスが迷い込んだ不思議の国ような、衣装だんすの向こうに広がるナルニア国のような、伝統的な英国ファンタジーの空気を纏ったこの作品。
ファンタジー好きさんなら、懐かしさすら感じるかもしれません。
でもスナーグの国は不思議の国やナルニア国とは少し違って、選ばれし者たちが唐突に連れていかれてしまうようなところではありません。
一度その存在を知れば誰もが行きたいときに行き来できる、身近な場所なのです。
ただみんな、その存在を知らないだけ。信じていないだけ。
「―――天にも地にも、わたしたちが考えるよりたくさんのものが存在しているのよ。可能と不可能。現実と想像。それぞれのあいだには、はっきりとした線がひかれているとかんがえてしまいがちだけれど―――そんな線なんて、かんたんに消せるの。」
あちらの世界の入り口は、ひょっとしたら私たちのすぐそばにも、あるかもしれませんね。
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