「リッラン」とはスウェーデン語で「小さい子(親しみをこめた呼び名)」。
黄色い大きなねこの背中にまたがった、赤いお洋服の女の子がリッランです。
ギラリとした目に、こわさと驚きを隠せなかったリッランでしたが
「ぼくは やさしい ねこですよ。こわがることはありません」
のひとことで、ねこの背中に乗ることになりました。
たったかたったか、かけだすねこ。 そのはやいこと、はやいこと!
おんどり、ぶた、がちょう、あばれんぼうの牛まで、道で出会う動物はみんな、ふたりをこわがって逃げだしてしまいます。
しまいには、鼻がのびる、へんなおじさんまで。
そうです、おもちゃのむちを持ったリッランと、リッランを乗せて走るねこのコンビは、無敵なのです!
リッランがやっとねこから降りたのは、王さまのおしろでした。
ふたりは、お客さんとしてもてなされ、夢中で食べて、飲んで……ねこのおなかは爆発です。
でも大丈夫。 王さまには、腕のいい仕立て屋さんがいましたから……。
この物語は、ひとりの父親であり夭折の画家である作者が、ひとり娘「リッラン」に遺した絵本なのです。
病身の父親が描く、頼もしい相棒との冒険。 母親のぬくもりに包まれるラストページ。
シンプルな線画なのに、なぜかしらこの無敵コンビに背中を押されるのは、そんな父親の愛情がにじみ出てくるからかもしれません。
ほとんどのページが、横向きの人物と動物の姿。 ページを開けたら進むしかないんだよ、と言われているかのようです。
1909年にスウェーデンで出版された絵本。 100年という時を経てもなお、絵本を読むたびに天国から、こんな声が届きそうです。
「これから進むであろう道、どんなことがあってもだいじょうぶ。ねこの背中に乗っているんだから。手には(おもちゃの)むちがあるんだから」
まるでお守りのような絵本です。
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