ある日、機関士ルーカスは、年の離れた大親友ジム・ボタンと共に、生まれ育ったフクラム国を出る決心をします。
というのも、フクラム国は私たちの家を2軒合わせたほどの小さな島で、ジムが大きくなるにつれ、だいぶ「混み合って」きてしまったのでした。
そもそもこんな小さな島にどうして機関車がいるのか、と不思議に思った方もいるでしょう。
でもご安心ください。
ちゃんと語り手が答えてくれています。
「それはね、機関士には機関車が必要だからです。機関車がなければなにを運転すればいいのでしょう? エレベーターでしょうか? けれどもそれでは機関士ではなくて、エレベーター操縦士になってしまいます。」
さて、島を出るのに必要なものといえば、船ですね。
ところがルーカスは船を持っていません。
どうするのでしょう?
なんと、機関車エマを船に仕立ててしまうのです。
海を進む機関車なんて、すてきでしょう?
2人を待ち受けているのは、わくわくどきどきの大冒険。
透き通ったガラスのような草木に目を奪われたかと思えば、しましまの山脈や不思議な蜃気楼ただよう砂漠で、危うく命を落としかけます。
そしてお姫様を助けるためにドラゴンの街にも乗り込み、宝石きらめく洞窟を通って大脱出!
ジム、ルーカスといっしょに私たち読者も冒険に夢中になれるのは、強固な信頼関係で結ばれたこの2人ならばきっと帰って来られる、という安心感があるからでしょう。
それから、滑稽なほどに個性的な登場人物たちが、皆その存在を認められているという温かさにも、支えられているのかもしれません。
ジムとルーカスの冒険は、これで終わりではありません。
「けれどもこれは別の物語、いつかまた、別のときにはなすことにしよう」と付け加えたくなるような終わり方。
続きが気になる方は、『ジム・ボタンと13人の海賊』も読んでみてくださいね。
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