子どものためのセレクト・ブックショップ ちえの木の実
「ちえの木の実」ロゴ
ちえの木の実とは
おすすめの本
木の実便
おもちゃ
店舗案内
Q&A
リンク
HOME
おすすめの本



書籍名 真夜中のちいさなようせい
出版社 ポプラ社
著者 シン・ソンミ/文・絵 清水知佐子/訳
出版年 2021年
定価 1,650円(税込)

あ ら す じ

ある真夏の日、熱にうなされる息子の看病をするママ。
息子の枕元で、うつらうつらと、いねむりをしているようです。
ママは眠っているように見えるのに、息子にはちいさな声が聞こえます。
そして、傍で眠っていた、猫にも。

その声の正体は、ちいさな妖精たちでした。
きっちり結った髪に、チマチョゴリを身に着けた妖精たち。
ママのかわりに、お薬を飲ませ、熱くなった手拭いを取りかえ、慣れた手つきで看病をしてくれます。
そして、この妖精たち、かつて幼い頃の、ママのお友だちだったというのです。
友だちのしるしの「花のゆびわ」を、大事に持っていました。

「花のゆびわ」をくれた子が大人になり、ママになり、わが子を看病する間も、妖精たちは心配したり、応援したり、なによりあの頃のようにいっしょにあそびたいと願っていたのかもしれません。
息子の看病に疲れ、ふと眠ってしまったわずかな時間、妖精たちを思い出してもらう大チャンスだったのでしょう。
子どもには見えて、大人には見えないもの。
子どもは見たいと願っていて、大人は見たいとすら思わなくなってしまったもの。
それは意外と身近にあるのかもしれません。
過去と現在をつなぐ「花のゆびわ」は、私たちのすぐそばにも、ころんと転がっているのでしょうね。

原題は『真夜中のアリの妖精』……はい?アリ?と目を疑いました。
妖精=ちいさいもの=アリ、という単純な解釈ではないようです。
食べこぼした甘いものに、いつのまにか群がるアリのように、ふとした一瞬のすきに現れるだれか。
無垢な視線を持つ子どもは、その瞬間を見逃さないようです。
確かに、子どもや、この絵本にも登場する猫は、どこかに向かって、誰かに向かって、すっと手を伸ばしたり、じーっと見つめたりしていますよね。
この絵本を開くと、子どもの目をもう一度持ちたい、と思ってしまうのです。
そして、このママのように、もう一度子どもの目を持つことができるのだろう、と思うのです。




■ バックナンバーはこちら

copyright(c)ちえの木の実,all rights reserved.