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書籍名 わたしのしゅうぜん横町
出版社 ゴブリン書房
著者 西川紀子/作 平澤朋子/絵
出版年 2009年
定価 1,540円(税込)

あ ら す じ

旅の地図を片手に、どこかよそよそしさをまとう町を歩くわたしは、やっとのこと、大昔の水くみ場にたどり着きます。
捜し歩いたその場所こそが、不思議な世界への玄関口。
ふと、目の前に現れた男の子にひっぱられるようについてゆくと……。
そこは、「しゅうぜん横町」の入り口でした。

「しゅうぜん横町」には、88店もの、修繕専門の店がひしめきあっています。
そして、どの店にも、趣のある看板が掛けられ、個性豊かな職人店主の情熱あふれる仕事ぶりがうかがえます。
修繕が必要なものはなくとも、なにかに導かれ、心赴くままに店の扉をあけたくなるわたしは、職人たちの手仕事に触れ、モノに込められた物語の数々を味わうことになるのです。

最初に入った「たんす屋」のコーヒーの香り。
「人形屋」の人形たちに染みついた涙のにおい。
「キスタ屋」のキスタ(化粧箱)に閉じ込められた、まぼろしの香水の香り。
わたしが巡る1つひとつの店で、読み手の私にも、物語に隠された香りの記憶が刻まれる……なんて甘美な時間なのでしょう。
現実の世界に連れ戻されたくないという錯覚に陥ってしまうのも、きっと、この魅惑的な香りのせいかもしれません。

古びたモノ。
破れたモノ。
壊れたモノ。
止まったモノ。
開かないモノ。
私たちは「修繕」よりも「新調」や「交換」を選びがちかもしれません。
しゅうぜん横町の職人たちは、どんなモノにも、もう一度命を吹き込んでくれます。
元どおりにはならなくても、形のない思い出を丁寧に扱い、手を施してくれます。
モノといっしょに生きてきた物語を、そっと語りながら。
いつの時代、どの場所にあったのか、そもそも実在するのかさえわからない横町。
地図にない場所を確かに訪れた記憶と香りだけが、鮮明に心に残る物語です。




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