4コマ漫画、詩、イラスト、画、そして童話「チリンの鈴」。
やなせたかしさんの声とメッセージがぎゅっとつまった、贅沢な構成の1冊です。
「えらくなっちゃいけない」にハッとし、「てのひらを太陽に」に幾度もうなずき、今、確かに生きているというじわじわとした感覚にしばらく包まれます。
この歌詞の中で出会った「ちしお」という言葉に、ほとばしる生命力を感じずにはいられません。
さらに、童話「チリンの鈴」に心が震えます。 怖くて、悲しくて、痛くて、震えるんです。
絵本『チリンのすず』以上に、戦うことや復讐の虚しさ、孤独の寂しさが押し寄せてきて、いつまでもチリンの首の鈴の音が心に鳴り響くのです。
やなせたかしさんの、やさしい言葉のなかには、一本筋の通った強さがあります。
その源は、愛であり、希望であり、正義なのでしょう。
愛、希望、正義……その意味は難しくて、辞書を引いても、書の中にもなかなか見つけだせません。
でも、やなせたかしさんの言葉に触れると、わずかに近づくことができる気がするから不思議です。
正しいことの答えはたった1つ、目の前の飢えている人に、ひと欠片のパンを差し出すことだよ、と笑いながら話すやなせたかしさんの顔が浮かびます。
そんなことを考えながら、本を閉じると、ちいさなメッセージが。
もし夢の中が幸福なら
がまんしよう
ねむっているときしあわせなら
人生の1/3はしあわせなのだから
心がふっと軽くなりませんか?
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