「夏休み、二週間もいなかのおばさんの家ですごすうちに、ぼくたちは、すっかりたいくつしはじめていた」
そこで、「禁止」されていた庭に「もぐりこんだ」のがはじまり。
庭というよりは森、大きなジャングル。
見つけてしまったのは、大きな船。
まるで本物の船のようなその場所に、ふたりの子どもたちは足を踏み入れたのでした。
ふたりの探検隊は、やがて水夫となり、この船で世界中を航海します。
すさまじい嵐にも遭遇します。
実際、船(のようなもの)はそこにあるだけなのに、想像力と行動力で、たいくつだったひと夏が、忘れられない思い出の夏になるのです。
もちろん、このお話にスパイスを加えているのは、子どもに寄り添う大人の存在かもしれません。
船長をこよなく愛すトリディーガさん、そして水夫長(おそらく庭師)のおじさん。
子どもの世界と大人の世界の垣根を壊して、子どもたち自身が誇らしいと感じるような仕事を与えた大人たち。
子どもたちの目線を大切にし、子どもたちの目に映る世界を肯定し、限りなく広げてくれた大人たち。
自然体で、とにかくかっこいい。
毎夏、訪れたくなる場所があるって、いいですね。
毎夏、思い出す誰かがいるって、いいですよね。
自分の胸だけに、そっとしまっておきたい思い出があるのも。
その船の姿がなくなった今でも、船と共に過ごした記憶が心の中に生き続けていることも。
この絵本を読むと、大人の私は、子ども時代に探検した公園裏の景色がサーッと浮かびます。
子どもたちはどうでしょう。
この絵本を読むと、ちょっと「たいくつ」な時間を過ごして、その先に見える風景に出会ってみたくなるでしょうか。
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