毎年王さまに梨をおさめていた男が、ある年、足りない分の梨の代わりに、籠にわが子を入れておさめることにしました。
王さまのくらから出てきた女の子は、賢く、心やさしく、気立てのいい子だったので、ペリーナ(なしっ子)と名づけられ、誰からも好かれ、王子さまともなかよくなりました。
ところが、めしつかいたちのやきもちから、宮殿を追い出されることに……。
魔女の宝をとってくるまで、帰ることはできません。
でもペリーナには、梨の木という味方がいました。
梨の木の根かたにいるおばあさんが、ペリーナが勇敢に進むちからをくれるのです。
一つひとつの難関を、手に入れたアイテムで切り抜けるペリーナ。
行く手を阻む、かまどの女たちや番犬、血のような川が、ペリーナのおかげで苦しみから解放される姿にも、拍手をおくりたくなります。
まだあどけなさの残る裸足の女の子ペリーナの、もぎたての梨のような瑞々しさ!
そして、なかよしの王子のかわいらしい知恵がはたらくラストシーンは、額に入れて飾りたくなるほどの美しさではありませんか。
これは、イタリアのモンフェッラートに伝わる「梨といっしょに売られた子」という民話。
酒井駒子さんの描く「なしっ子ちゃん(ペリーナ)」は、私の思い描いていた女の子にそっくり!
また、印象的なある場面はイメージ以上のものでした。
いつだったか、(耳で)聞いたことのあるおはなし、(目で)読んだことのあるおはなしと、絵本という形で再会するときのよろこびはひとしおです。
再会でありながら、新しい出会いでもあるのですから。
そんなふうに、子どもたちや、かつて子どもだった大人も、世界の民話に出会い、世界を飛びまわることができたら幸せですね。 |