まるで春の風に誘われるように、まるで妖しい何かに突き動かされるように、出会うべくして出会った、この春中学生になる3人の女の子。
突然なにかがぷっつりと切れ、心の風邪をひいていたまゆ子が出会ったのは、親元を離れて女子校で寮生活をするアミと、寮の舎監室に暮らすテトでした。
そして彼女たちの友情のきっかけとなったのが、『小公女』という1冊の本でした。
『小公女』の主人公、セーラの高潔さに憧れを抱く3人は、3人でいるときだけに起こる不思議な体験に心を揺さぶられます。
茶色い瞳の青年、白髪の老人、クローバーの茂る秘密の場所、高い塔に現れる黒い影……。
彼女たちの目に映りこむ「色」が、読者にくっきりとした印象を残してくれる物語です。
そんな「色」に導かれながら、絡み合った糸を辿るうちに、子どもは子どもの、大人は大人の、見えづらかった答えが見えてゆくのです。
ささいなことに笑い転げていた12歳が読んでも、心も身体もぐんぐん育とうとしている子どもを持つ親世代が読んでも、思い出の本と共に人生を振り返る世代が読んでも、それぞれの心に熱いなにかを灯してくれるでしょう。
ピンク色から緑色へ季節の色が移ろう頃に、『小公女』を傍に置いて読みたい1冊です。 |