赤茶色の表紙に、白黒の絵。
もしかしたら、一見、地味な絵本に見えるかもしれません。
でも、だからこそ想像力がかきたてられ、男の子と動物たちといっしょに、どんどん『もりのなか』へ入っていけるのですよ。
男の子は、もりへさんぽに出かけます。
紙のぼうしをかぶり、ラッパを手にして。
胸をはったその姿は、なんと愛らしいのでしょう!
男の子が見つめるもりは、なんだか深そうです。
ラッパを吹きながら歩いて行くと、まずはライオンに出会います。
ライオンも男の子について行くのですが、ちゃんとくしでかみをとかし、冠をかぶってから。
身じたくを整えるところは、男の子と同じですね。
その後も、ゾウ、クマ、カンガルー……と、1ぴき、また1ぴき、動物があとに続きます。
(ほとんどみんな、身じたくを整えてから)
動物たちが男の子に声をかける時のにっこりとした表情を見ていると、なんともいえない幸福感に包まれます。
中には、男の子からそばに行ったり声をかけたりしてさんぽに加わる動物もいて、男の子の優しさも伝わってきます。
歩いて行った先で、みんなで心ゆくまであそんでいる姿は、とてもいきいきしています。
(絵をよーく見ると、木の枝の上にもう1ぴき、ひそかにみんなを見守っていた動物の姿も見られますよ!)
おはなしも絵もシンプルで、しっとりとしています。
ラストには少しびっくりしますが、静かな余韻が心地よいのです。
だからこそ、繰り返しこの『もりのなか』でさんぽをしてあそびたくなるのかもしれません。
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