リリーは、おばあさんのひざの上で、一心に耳をかたむけていました。
おばあさんが昔、くじらに会い、思いがけない「おかえし」をもらったおはなしに。
どうしてくじらに会えたかというと、くじらに「おくりもの」をしたからなのです。
これは、おばあさんにとっては大切な思い出。
リリーにとっては、くじらが夢に出てくるくらい、胸がふくらむようなおはなしでした。
真っすぐにおばあさんを見つめて、楽しそうにおはなしを聞くリリーと、幸せそうに語るおばあさん。
神秘的なおはなしをわかち合う2人の時間が、どれほどかけがえのないものかは、その笑顔から伝わってきます。
次の日の朝、リリーは、浜辺にある桟橋の上から、くじらへの「おくりもの」を海へ落とします。
おばあさんの時のように、くじらから「おかえし」してもらえることを願って。
夢のようなことでも、想い描いて信じていたら、その通りのこと……いえ、自分の想像を超えるようなことが起こるのではないか、月の光に照らされたリリーの表情を見ていると、そう思うのです。
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