「たびに出ようとおもう。」
きりっとした表情で、ヤマネコが放ったひとこと。
森のみんなが考えたのは、旅立つヤマネコとの思い出を、大きな布に刺しゅうすることでした。
ヤマネコのことを思い出すと・・・・・・
ツメがいたかった、とサル。
コタツみたいにあたたかい家に泊まりにきていたね、とクマのかあさん。
特別おいしいタンポポをたくさん届けたのに、ちっとも食べてくれなかった、とノウサギ。
笑顔になる思い出もあれば、険しい顔になる思い出も。
とうとう「あいつに プレゼントするなんて やなこった!」という子も。
森のみんなとの思い出が、ひと針、ひと針に縫いこめられた毛布は、どんなにあたたかいことでしょう。
広げるたびに、こぼれるほどの思い出がつまった毛布があれば、どんな旅ができるでしょう。
旅立ちのときだけに、別れのときに、こうして受けとることができる「餞(はなむけ)」。
そばに置いておくだけで、毛布のようなぬくもりを感じていられる、これこそ、餞ということばがよく似合う絵本です。
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