「ちいさなもみのきが、まだ ひとつぶの たねだったとき、あるひ、かぜにふかれて、たねは そらをとび、もりをこえ、のはらの つちのうえに おちました。」
ちいさなもみのきが生まれるところから、このお話ははじまります。
少しずつ大きくなっていく様子は、まるで赤ちゃんの誕生と成長を慈しむかのよう。
ちいさなもみのきは、じぶんだけ森から離れて野原に立っているのをさびしく感じ、だれかといっしょにいたい、と願っていました。
ある日、おとこの人がやってきて、ちいさなもみのきを連れて帰ります。
「おまえは これから、すばらしいおいわいに いくんだよ。」
もみのきは、この人の息子であるちいさな男の子のもとで、ふしぎなかがやきをはなつクリスマスツリーになりました!
お父さんの、息子ともみのきへかける愛情や、男の子ともみのきの間に生まれた絆に感動をもらいます。
自分にも、幼少期を一緒に過ごした、パートナーのような存在のものがあったことを懐かしく思い出しながら……。
ワイズ・ブラウンの描きだす、ささやかであたたかいクリスマスの情景と、クーニーの素朴で美しい絵が響きあいます。 一言一言かみしめたくなるような日本語訳も素敵です。
この本を読むといつも、親しい人たちと集ってお祝いの日を過ごすことが、こんなにも人の心にあかりをともしてくれるのだなあ、と胸がいっぱいになります。
読み終えた後に、子どもと「わあ、楽しかったね!」とわいわい語り合う本もありますが、この本を読んだ後にはいつも、お互い満たされた気持ちになって、そっと静かに余韻を味わいます。 そんな時間を過ごせるクリスマスの絵本です。
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