ある、広くて平和な国の王さまとお妃さまの悩みは、子どもがいないこと。
子どもが授かるよう魔法使いにお願いしましたが、王さまが魔法使いとの約束を破ったため、その報いとして、子どもはロバの姿で生まれてきたのでした。
ロバのおうじは、その容姿のせいで誰からも認めてもらえず苦しみましたが、めげることなく、王子として必要なことを身につけていきました。
彼が生まれた時、どんな姿であろうと王子として育てる、と王さまが下した決断は、ロバのおうじを強くした、唯一の愛情だったのかもしれません。
しかし、王子としてなんでもできるようになっても、自分を受け入れてくれない両親。
自分のことが好きになれず、鏡の前で自問自答するロバのおうじの姿は、まるで人が人生の中で自分自身と向き合う姿をあらわしているかのようです。
悲しい思いをした分、育まれた内面が、その人の魅力となって随所に現れるのでしょう。
ロバのおうじが奏でるリュートの美しい音色は、聴く人たちの心を打ちました。
それまでの彼の人生が、やさしさとなって彼の所作ににじみ出ていたから、お姫さまはロバのおうじを心から愛したのだと思います。
子どもにも、大人にも、このまっすぐな愛のお話が届いてほしい、と切に願います。
そして、大切な人との間に、あたたかな時間が流れますように。
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