岬に、1本のとうだいがたちました。
夜に照らすひかりは、海をゆく船の目じるしになりました。
日々海をながめていると、客船や漁船、魚のむれやくじらなど、知らないどこかから来て、知らないどこかへ行くものとの出会いでいっぱいです。
渡り鳥がやってきた初めての冬、見たこともない国の話をわくわくしながら聞きますが、春になると渡り鳥は北へ帰り、自分はどこにも行けないことを悟ります。
海が穏やかな時も、恐ろしい嵐がやってきても、
「くる くる ぴか ぴか くる くる ぴか ぴか」
とうだいが照らすひかりは、思いもよらない遠くにまで、確かに届くのです。
ちえの木の実は、今日もこの場所で息をしています。
そして私たちは、これからも1人ひとりに本を手渡し続けていきます。
どんな時も同じ場所でひかっている、このとうだいのように。
みなさまと、笑顔でまた会えることを願って。
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