年老いて病気で寝ている母親と暮らす藤六(とうろく)は、百姓仕事をしつつ、荷物を運ぶ仕事をしています。
労を厭わず、たとえ火の玉が降る中でも、雨が激しくたたきつける中でも、託された荷物を運ぶことに、責任をもって毎日取り組む藤六でした。
ある日、藤六が出かけようとすると
「お前の父親がたいせつにしていたものだ」
と、ふるぼけたずきんを母から渡されました。
早速かぶって外へ出て荷物を背負い、遠い届け先へと近づくと……雨は去り、空は晴れ渡りました。
藤六はふと、汗をぬぐおうとずきんを動かしました。
すると、まわりの木々のあたりから、頭の上の方から、かわいらしいたくさんの声が聞こえてきました。
「いこうや、いこうや、むこうの むらへ いこうや」
「あたしも あそぼう」
それは、鳥たちの声でした。
どうやら、それはふしぎなずきんのおかげらしく、鳥たちの声が、人の言葉になって聞こえてくるのです。
藤六は、たいそう驚きましたが、そのうちにおもしろくなってきて、さらに鳥たちの会話に耳を澄ませました。
すると、長者の娘さんが病気であるという話が聞こえてきました。
さらにその会話から、娘さんの病気を治す方法を知った藤六は……!?
美しい日本語で紡がれた物語と、洗練され、それでいて楽しげな童画との調和が織り成すこの本には、他に「うりこひめとあまんじゃく」の計2話がおさめられています。
読んだあとには、豊かな昔話の世界に、心をあそばせたあの頃の自分が、少し戻ってくるかもしれませんね。
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