「わらうことは、もっともすばらしいおんがくだとおもうし、だれにもわかることばだとおもいます。」
そう語る作者が生み出した『まほうつかいの ノナばあさん』には、ユーモアとあたたかさが満ちあふれています。
イタリアのカラブリアという町に、ストレガ・ノナと呼ばれるおばあさんが住んでいました。
「まほうつかいのノナばあさん」という意味です。
なにしろ、まほうつかいですから、町の人たちはノナばあさんのことを、陰でひそひそ言いました。
でも、やっぱりまほうつかいですから、油と水とヘアピンで頭痛をたちどころに治したり、素敵なお婿さんをのぞむ女性に特別な薬をあつらえたり……と、その腕は確か。
皆、何かあるときには、こぞってノナばあさんのところへでかけていくのです。
とはいえ、ノナばあさんも年をとったので、掃除や畑仕事を手伝ってくれる人が必要になりました。
貼り紙を見てやってきたのは、うっかり者の、アンソニイ。
「あのスパゲッティをゆでるかまには けっして さわっちゃいけないよ」
そのただ1つだけを約束させ、寝るところも、食事も用意して、さらに、金貨3枚の約束をしました。
アンソニイは、うっかり者ですがよく働きました。
掃除、皿洗い、畑の草むしり、野菜のとり入れ、やぎのえさやり、ミルクしぼり。
そんな毎日を過ごしていた、ある日。
アンソニイが仕事をしていると、ノナばあさんがスパゲッティのかまの前に立ち、歌っているのに気がつきました。
歌の歌詞を聞きながら見ていると、床に置いてあるかまはグツグツ煮え立って、ほかほか湯気のたつ美味しそうなスパゲッティで、あっという間にいっぱいに!
続けて別な歌詞の歌が聞こえて、かまは落ち着き、静かに眠りました。
アンソニイは、びっくり仰天!!
「あれこそ まほうのかまに ちがいない」
と、町の人に誰彼構わず、どんどんまほうのかまの話を広めました。
でも、ひとりとしてアンソニイの言うことを信じません。
腹をたてたアンソニイは、皆の鼻をあかしてみせようと、ノナばあさんが出かけたその日、あのかまを取り出しました!
うっかり者のアンソニイが繰り広げることになってしまった、一連の騒動。
トミー・デ・パオラからの笑顔の贈りものを、どうぞ最後までお楽しみくださいませ。
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