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書籍名 花さき山
出版社 岩崎書店
著者 斎藤隆介/作 滝平二郎/絵
出版年 1969年
定価 1,300円+税

あ ら す じ

今、かの優しさ、赤い花。
今、このけなげさ、青い花。
人の心の清(さや)かなる、花いちめんに咲きほこり。

あやの年は、十を数える。
まだ幼い妹のそよがいて、暮らしは貧しく、山へ入り山菜とりを手伝ったりもする。

ある日のこと、道に迷い、ひとり、山の奥へ奥へと入りこんでしまった。

そこに広がっていたのは、見渡すかぎりのいちめんの花。
赤い花、青い花、黄色のや、紫や。

おまけに、そこには見目恐ろしげなやまんばがいた。

しかし、やまんばは誰よりその花の美しさを知り、その花を咲かせた魂の尊さを知っていた。

やまんばと遭遇していたわずかな時、あやは知った。

自分が辛抱したひとつが、そこに凜とした赤い花を咲かせ、誰かが生んだけなげさひとつが、涙のつゆをたたえた青く美しい花を咲かせたことを。

優しさの赤い花。
けなげさの青い花。
夢でなく、幻でなく、今もそこにいちめんに。

力強く静かに咲きほこる花の中に、人の心のありようを願った作者の大輪のひとつも、また、これを読んでくださった方の一輪も、きっとそこに。




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