ふかいふかいみどりの森のそのはずれに、1本の、たいそう古いもみの木がありました。
きびしい自然と共に生きていくため、もみの木はねじまがり、からだをよじらせ、大きくなっていきました。
やがてそこにシカがすみつきました。
「パセリ」と呼ばれるシカと、年とったもみの木の、友情の物語。
もみの木にはパセリが、パセリにはもみの木が必要でした。
長い歳月を共に過ごしてきたふたりは、よく似ている。
夫婦、恋人、友、親子。
かけがえのない人のことはよく見ている。
互いを尊敬し、労り、時にぶつかり、そして寄り添い。
夕日に染まった黄昏の森に、パセリともみの木のシルエット。
それはそれはよく似ています。
『マドレーヌ』シリーズの作者ベーメルマンスの人柄を想わせる、のびのびとした絵と物語。
故郷チロルの山々を、いつも心に描いていたのだろう。
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