町外れの小さな店「Life」には、売っているものはなく、店員さんもいません。
ある時、ここを訪れたおばあさんが、持ってきた小さな袋をいくつか棚に置きました。
中身は、おじいさんが咲かそうとしていた、たくさんの春の花の種。
ひとしきり思いを巡らせて、やがて目にとまった写真立てを手にとると、「Life」をあとにしました。
次にここを訪れたのは、小学生くらいの男の子。
興味深そうにあちこちを眺めて、おばあさんの置いた花の種を見つけると、自分がずっと大切にしていた絵本を置いて、花の種を手に、帰りました。
次にやってきたのは……。
ここは、ものを売るのではなく、人の想いが行き交う場所。
見知らぬ誰かとの人生が交差して、心がつながっていく、陽だまりのようなところ。
物語のラストまで、「Life」を訪れた人々のつながりに心添わせたくなるこの絵本は、物語の先へと続く、終わりのない人生そのものを描いた一冊であると共に、現実の世界で交差する人々の心がこうであったなら、と、祈りたくなるような物語。
かの有名な、いわさきちひろさんのお孫さん、松本春野さんの、やわらかい線と色づかいで添えられた絵もご堪能を!
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