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書籍名 月夜のみみずく −OWL MOON−
出版社 偕成社
著者 ヨーレン/詩 くどうなおこ/訳 ショーエンヘール/絵
出版年 1989年
定価 1,200円+税

あ ら す じ

表紙をめくると同時に、
あなたは、
暖かい家のドアをむこうへと押し開けて、
そして、
外からの、刺すように冷たい空気を顔に
  ─ ぼうしとマフラーで覆うことのできなかった目の周りに
感じるでしょうか。

後ろを振り返れば、
「さあ、行くぞ」と、もう出かけるばかりに身支度を整えて
こちらへやってくるとうさんの優しい目を、
見るでしょうか。


  雪のやんだ、月明かりのまぶしい夜。
  みんなみんな、寝静まった時間。
  とうさんと、森へ、みみずくさがしにでかけた。
  はるかとおくに、汽車の汽笛が聞こえるほかは、
  風の音もない。
  雪をふむたび、少しこおったような、しゃりっという音がする。
  あとは、わたしととうさんの吐く息と
  月のひかりだけ。
  ほんとにしずかで、夢をみているみたい……


きつねや小鳥、ねずみやあらいぐまといった森の生きものたちも
息をひそめて親子の後姿を見送る中、
二人はしずかに森をめざします。
ずっとずっと楽しみにしていた、みみずくに会いに。

「みみずくにあいたいなら、じっとだまって、しずかにしてなきゃ」
少女は、期待と興奮に胸ふくらませながら、
父親と兄から聞いた言葉を思い出し、自分に言い聞かせるようにして、
歩みをすすめ、くらい木立ちの森を抜け、辿り着いたそこで、
ついに、念願のみみずくに出会いました。

1分だったのか、もう少し長い時間だったのかわからないほどに、
目の前の存在に心奪われ、息をするのも忘れて見つめ合ったその時間は、
去る影を見やった後にも続いて、
その瞬間を、大切にたいせつに、胸の奥深くにしまう少女の姿は、
幼い子どもが、神秘に出会った時の姿、まさにそのものです。

遮るもののない、現実の場所と時間の中で、
ひとりの少女が体験したことは、
人の力など及びもしない、大いなる自然の袖の端を掴んだほどのことでしたが、
そこから、自分もまたその一部として生きるものなのだと、
感じていくのかもしれません。


詩のように情景をうつしだした言葉の流れと共に、
少女の心の動きと、親子の歩いた夜の道を見せてくれる美しい絵が
このおはなしの聞き手を、みみずくの森へ共に歩ませ、
そして、息をひそめて、みみずくと見つめ合う瞬間へと誘ってくれることでしょう。



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