オランダ人形トチーは、 小さな二人姉妹、エミリーとシャーロットのもとで、 靴の空き箱を二つ重ねただけの家に、家族と一緒に暮らしていました。 楽しい毎日でしたが、今の住まいは家族四人で暮らすには、 少し窮屈に感じられました。 そんなとき、トチーはよく、昔、自分が住んでいた、 素敵な“人形の家”のことを思い出しました。 二階建ての、住み心地よい家。 それは、あまり大きな家ではありませんでしたが、 クリーム色に塗られた外壁にはツタの絵が描かれ、 窓にはレースのカーテンがしつらえてありました。 居間には赤々と火の燃える暖炉、それにピアノが置いてあり、 二階へ行くと、広い寝室と、蛇口からきちんと水の出るお風呂もありました。
トチーの暮らしたその家は、エミリーとシャーロット姉妹の ひいおばあさんの家に長いこと置いてありました。 それが、ある日のことです。 ひいおばあさんが亡くなったことをきっかけに、その素敵な家が、 トチーたちのもとへやってくることになったのです。
家族はこの吉報に沸き立ちましたが、 トチーは、幸福な思いを抱く反面、 不吉な兆しを感じ取らずにはいられませんでした。 その家に住み着いていた、冷酷で、恐ろしく傲慢な人形、マーチペーン。 マーチペーンが、あの家を簡単に離れるのでしょうか?
本作は、作家として名声を博したルーマー・ゴッデンの、 初の児童文学作品としても有名です。 人間の世界で日々起こる色々な出来事を、そのまま人形の世界に置き換えて 表現したかのようなドラマティックな構成は、 読むものの心を捉えて離しません。 手に汗握って、物語の行方をお楽しみ下さい! |