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書籍名 |
十歳のきみへ 九十五歳のわたしから |
出版社 |
冨山房インターナショナル |
著者 |
日野原重明/著 |
出版年 |
2006年 |
定価 |
1,200円+税 |
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十歳のきみへ。
九十五歳の医師 ─ 聖路加(せいるか)国際病院で、今も現役である著者は、 この本に、そう題を冠した。
否、この「本のかたちをした手紙」に、である。
静かに、ゆっくりと始まる話の数々は、 受け継がれていく幼い命への信頼と希望、そして慈愛に満ちたものであり、 まるで、子どもの傍らに腰掛け、語られているかのようだ。
ここで、語られたこと。 そのひとつひとつが、子どもの心に届き、
なお、いつか十歳だった大人の心にも届き、響き、拡がっていく筈のもの……と 深く頷かせてくれる一冊。
「寿命」とは、「その人に与えられた時間」であり、 つまり、「生きることに費やすことのできる時間」。 しかし、与えられた限りある時間をけずっていくのではなく、 「寿命」という大きな器の中に、精一杯生きた一瞬一瞬を 注ぎこんでいくことを大切にしてほしい。 そして、自分のためだけにその時間を使うのではなく ほかの人のために使ってこそ、それは、より生きてくる。
遺伝子の力だけでは計り知れない、「きみ」の内面を形作るもの。 それは、家族との関わりの中で過ごす、膨大な時間が育んだもの。 毎日のくり返される暮らし=家庭の中で、 自分のおおもとのところ、芯になる部分が作られていく。 自分や自分の住む国だけが安全で快適ならばそれでいいんだ、と 思っている限り、いつまでたっても世界の平和を実現できない。 世界には、爆撃や銃弾に倒れる人がいて、 貧しくて食糧を得られない人がいる。 自分がジュースやお菓子に手をのばし、 手足をのばして、のんびりお風呂ですごしている時、 テレビで見たその悲惨な映像は、画面の中にだけある世界ではないことを 知り、どんな命もかけがえのないことを知り、 どんな命も粗末に扱ってはいけないことを知ろう。 そうして、「知る」ということに、もっと想像力を込めることができれば 他の人の命を助けることもできることを知ってほしい。
著者の思いを受け取り、またそれを子どもたちへ手渡していくことができるのは 「大人」である私たちである。 そこに、想像の力と、自分ではない人を思う心を込めて。 |
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