おにいちゃんが絵の具を使って、楽しく絵をかいているとき、 よしみはいつも、自分もそれで「かいてみたい」と思っていました。 おにいちゃんが言うには、それは『まほうのえのぐ』なんです。
ある日とうとう、よしみは『まほうのえのぐ』をかしてもらうことができました。 よしみは、たくさんの色のなまえを知っています。 だいすきな色のえのぐを、パレットに出しては、
画用紙の上に、次々と重ねていきます。筆が紙の上を走る音が聞こえます。 色はどんどん混ざり合って、一面茶色のどろんこの絵ができてしまいました。
でも。 茶色くなった筆を持って、みずいれとパレットを洗いに行き きれいにしたところで、新しい画用紙に絵をかこうと戻ってきたら、 足元からしゅるっと出てきたへびが、だいじな絵の具を口にくわえて もりのなかへ走っていきます!
あわてて追いかけると、そこには……!?
たくさんの動物・鳥・虫たちと共に、 それぞれが自分らしい絵を描き、のびのびと筆を動かす様は微笑ましく、 向こうの木の幹に、ちかくの葉陰にと、 そこここに思いおもいの色鮮やかな絵が置かれ、 見る者の目を離さない絵本です。 『はじめてのおつかい』『こんとあき』などで名を知られる林明子さんの作品には 多くの子どもたちが出会っていますが、 子どもが、しっかりと遊びこむ、ほんとうに子どもらしいその姿は この作品でも変わることなく大切に描き出されています。
物語を読み終えたら、裏表紙をのぞいてみてください。
よしみと、もうひとり、誰かの描いた「まほうのえ」が、そこにあります。 そして、もう一度、はじめから読んであげるとき、 よしみの足元を、よく見ていてくださいね。 きっと、この絵本が、もっと楽しくなりますよ! |