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書籍名 |
ちいちゃんのかげおくり |
出版社 |
あかね書房 |
著者 |
あまんきみこ/作 上野紀子/絵 |
出版年 |
1982年 |
定価 |
1,300円+税 |
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「かげおくり」という遊びを、ちいちゃんに教えてくれたのはお父さんでした。 10(とお)数える間、地面にうつる影を、まばたきもせずじっと見つめて
「……ここのつ、とお」と言ったら、空を見上げる。 すると、見つめていたかげぼうしが、そっくり空にうつって見えるんだよ ─ と。 早速家族みんなで手をつなぎ、足元に目をおとしたあと、青く晴れ渡る空を 見上げれば、目のうごきといっしょに、白い四つのかげぼうしが、 すうっと空に上がりました。 それは、大きなおおきな記念写真のようでした。
時は、戦の最中。 体の弱いお父さんも、戦地へ赴かなければならなくなりました。
やがて戦は激しさを増し、かつて「かげおくり」をして遊び、見上げた空にも 焼夷弾を乗せた飛行機が飛ぶようになりました。 そして、夏のはじめのある夜。
その時は、突然にやってきました。 町に爆弾が落とされ、その一面が焦土と化しました。 燃える川、焼き払う風、襲う炎 ─ すべてが赤と黒に染まる中、 人々は逃げ惑い、家族とはぐれ、己の死に気付く間もなく、その命をとじました。 決して抗うことのできない、強制的な一瞬で、人はすべてを失いました。 そして、ちいちゃんも家族を亡くし、 あとを追うようにひとりぼっちで、その小さな命をとじました。
いつの時代も、「戦争」を引き起こすのは、必ず私たち「人間」です。 蒼天の下、空を見上げるあなたのまなうらに、 あの幸せだった家族の影がうつるでしょうか。 今はもういない、あの幼い女の子のあどけなく笑う声が聞こえるでしょうか。 あなたと同じだけ、誰もが幸せであるように、自分にできることはなんでしょうか。 |
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