この、雪のように白く、森のようなりっぱなひげをもつ人は、 庭師のムスターシュおじいさんです。 そして、その傍らにいるのがフランソワ=バチストという少年です。 でも、まだこの子がとても小さな時に、何かふしぎなことが起こって、
きめたはずの名前が忘れられてしまい、彼は「チト」と呼ばれるようになりました。 富豪の家に生まれ、たくさんのものに恵まれて育ちますが、学校へ通いはじめた ものの、空想にふけって居眠りをし、やる気は充分なのに先生から0点を与えられ、 あっという間に家へかえされてしまいます。 さて、懸命に悩んだおとうさんは、あたらしい教育の方法を考え、 まずは庭師のムスターシュおじいさんから、あらゆる命の源である「土」のことを 学ばせました。 そのうちに、ムスターシュおじいさんは、チトの持つすばらしい園芸の才能に
気付きます。そして「みどりのおやゆび」の持ち主であることを教えてくれました。
それは、「土のなか、そしてあらゆる場所にかくれている種を見つける指」。 チトはその後、かみなりおじさんから町で様々なことを教えられますが、 不条理な規律・貧乏・病気などに対して、素朴な疑問を抱くようになり、 その度、奇跡のゆびで、人の心を豊かにし、花のあふれる町に変えていきます。
ついには、その力で戦争を止めることができました!そして……。
人間社会で、どんな時代にも無くなることのないたくさんの出来事に、 まっすぐで純真な眼をもって、向き合ったチト少年。 その奇跡の指が見つけた種が、あらゆる人のもとへ風にのり、 いつかそっと花開きますように。 |