ある事件がもとで家族が行方不明になってしまい、ひとりぼっちで暮らしている河童の子ども、八寸。
物語は、八寸が、長老に命じられて、猫の姿に化けて人間を観察するという修行に出されるところから始まります。
八寸はまだまだ小さくてたよりない子猫(子河童)なので、うまく人間に近づけずにいましたが、偶然、麻という女の子とチェスタトンという犬が暮らす家で暮らし始めます。
麻は、お母さんを亡くしたばかりでした。
かわいらしい八寸の奮闘ぶりと、信頼できる存在である麻とチェスタトンとの出会い。
楽しく読み進めていくうちに、麻の抱える心の痛みが浮き彫りになっていき、後半は何度も感情を揺さぶられ、涙が出ました。
「この花がきれいだってことが、どうして私にわかるんだろう。」
「お母さんが、美しいって教えてくれたから?お母さんが教えてくれなかったことを、自分はこの先どのように感じるのだろう。」
麻は八寸と過ごす中で、だんだん自分の感じることが信じられなくなっていきます。
でも、麻にもう一度前を向く力を与えてくれたのは、一番近くにいる家族。
亡くなったお母さんとのノートと、お父さんとチェスタトンと、八寸でした。
最後の別れの時、八寸は一つだけ、念じつづけます。
「麻、ぜったいに、わすれないで」
人を本当に想うとはどういうことなのか。
生きていく上で忘れてはいけない、大切なことは何なのか。
この1冊が、再確認させてくれました。
今では八寸と麻とチェスタトンが、自分の心の友だちのように感じます。
友だちのこと、ずっとずっと忘れないよ。 (嬉しいことに、2巻目で再会できますよ!) |