「本当は奪われているのかもしれない、と僕は思う。」
白い装丁の本の帯に書かれているこの言葉は、あとがきから抜粋されています。
飛び込んできたこの言葉に心を揺さぶられると共に、表紙の絵にも引き込まれながら、ゆっくりと本を開きました。
ごはんを目の前にして、テレビに見入っている男の子。
服を着て、ベビーカーに乗ってお散歩をしている犬。
星が見えない夜空。
日常に溶け込んでいるかのようなこれらの光景は、本当に私たちが望んでいる日常なのでしょうか。
いいえ、そうではないでしょう?
ページをめくる度に、絵と言葉が語りかけてきます。
心の扉をノックし、普段気にかけていなかったことを、ふと思い出させてくれるのです。
そうして少し立ちどまって、じっくりと自分と向き合う時間が生まれます。
「歩くはやさで 季節は めぐる 体の中を
そして昨日と違う 新しい今を生きよう 新しい私で」
まるでさわやかな風に背中を押されるかのように、気持ちを新たに歩んでいきたくなる、そんな気持ちになれる1冊です。 |