1匹の年寄りのロバが、じいさまの運ぶ荷物を背に乗せて、てくてくと歩く。
じいさまも年をとった。
ロバも年をとった。
長く共に過ごしてきた互いだった。
その日も、背に荷物を乗せて、じいさまとロバはてくてくと歩いていた。
ところが、今は使われていない古井戸に、ロバが落ちてしまった!
深いふかい古井戸だったので、ロバは自力ではい上がることができず、じいさまが引き上げてやることもできなかった。
年寄りロバの悲壮な鳴き声が響く。
じいさまは、なんとか助けてやれないものかと思案した。
しかし、方法は見つからない。
たとえ助けてやれたとしても、年寄りのロバが働けるのはあとわずか……じいさまは涙をのんで、ロバごと古井戸をうめることにした。
子どもか、誰かが、また落ちてしまう前に。
じいさまに呼び集められた一族が、手に手にシャベルを持ち、穴を埋め始めた。
ロバの一層悲壮な声が響く中、淡々と穴は埋められていく。
そして、半分ほどが埋められた頃、既に鳴き声は聞こえなくなっていた。
じいさまは意を決して穴を覗きこみ……そして、息を呑んだ!
ロバは、どうなったのか。
じいさまは、どうなったのか……。
ロバが穴の底で見上げた、丸くぽっかりと見えた空。
その空から、バラバラと降って来る、自分を埋めるための土、土、土。
ロバを埋めることを決めたじいさまの心。
そして、ロバを見送ったじいさまの目は。
これは、人によって大きく感想の異なる絵本。
生きるとは、人生とは、心の在り処とは……。
老若男女に手にとっていただきたい物語です。 |